表面処理:TUFRAM(タフラム):アルバックテクノ ケミカルセンター
表面加工に最適
『TUFRAM®/タフラム』
タフラム®皮膜は、硬くて機械強度に優れマイクロクラック等の微細凹凸に富んだ硬質アルマイトに、厳選された微小なフッ素樹脂をタフラム®プロセスにて複合した皮膜です。
皮膜は硬質アルマイトとフッ素樹脂のシナジー効果を発揮させた高機能複合皮膜で、耐摩耗性向上・摺動性向上・かじり防止・スティックスリップの減少等の特長を持ちます。
また、電気絶縁性・離型性・耐食性等の特性を有します。また、皮膜は均一であり、精度を要求される部品にも対応が可能です。
このように優れた特長を持つ『タフラム®』は幅広い業界・分野にて注目を集め、多くの装置・部品に採用され続けています。
適用材質
ほとんどのアルミニウムおよびアルミニウム合金に適用可能。
ただし、Cu 5%以上とSi 7%以上を含有する合金については、問題が生じることがありますので、必ず、当社にお問い合わせください。
膜厚
タフラム®皮膜の厚さは、通常20~50までを用いますが、材質や使用目的によって決定します。
皮膜の色
タフラム®皮膜は素材の種類・膜厚により色(自然発色)が変化します。
膜厚精度と寸法増加率
タフラム®のベース膜となる硬質アルマイト皮膜は、素材となるアルミニウムが陽極酸化反応(2Al+3/2O2→Al2O3)で体積膨脹により生成されるため、膜厚の半分強が素材に食い込んだかたちで成膜されます。
このように素材と一体化し、密着力に優れているので皮膜が剥がれにくい特長があります。
寸法増加率は素材により異なります。通常、膜厚の40~50%の寸法増加が見込まれます。
膜厚は±10以内に管理可能です。
それ以上の精度(最高±5)が必要な場合は、事前打ち合わせを要します。
摩擦係数と表面粗度
フッ素樹脂の効果により、膜の表面が滑りやすくなり、静摩擦係数と動摩擦係数の差が少なくなります。
スティックスリップ(始動時の抵抗が動き出した後の抵抗より大きいために生ずるギクシャクした動き)を最小限に抑えられます。
表面粗さは、処理前に比べ、若干粗くなりますが、処理後にバフ研磨等を行い、面粗度を向上させることにより、さらに摩擦係数を低くすることが可能です。
硬度と耐摩耗性の関係
タフラム®皮膜の硬度は材質の種類と膜厚により異なりますが、通常、表面硬度はHv約200~450になります。
硬い皮膜にフッ素樹脂の効果により、摩擦係数の低さとの相乗効果で、優れた耐摩耗性を示します。
電気絶縁特性
タフラム®皮膜は、非電導体で絶縁性が良く、膜厚に応じて500~1000Vの電圧にも耐えることができます。
耐食性と耐海水性
タフラム®皮膜はフッ素樹脂と硬質アルマイトの相乗効果により優れた耐食性を発揮します。
海水に対しては、通常のタフラム®処理でも有効ですが、さらに耐食性を増す方法として封孔処理もあります。
非粘着性
タフラム®皮膜の表面は、フッ素樹脂の効果により他の物質と粘着しにくくなりますが、実際の効果を確認する上でも、事前の試作実験をおすすめします。
高温特性
タフラム®皮膜は220℃の高温においても安定した特性を示します。
マスキング
タフラム®処理は通常、完成品の全表面に対して施されますが、特定の部分をマスキングすることも可能です。マスキングにつきましては事前にお問い合わせください。
●TUFRAM®(タフラム)の材質別特性表
材 質 |
膜厚
(μm) |
寸法 |
皮膜 |
色 相 |
皮膜特性 |
特 徴 |
硬
さ |
ク
ラ
ッ
ク |
成
膜
性 |
範囲 |
推
奨 |
増加量
(%) |
硬度(Hv)
|
A1050 |
20~50 |
50 |
45~50 |
350~450 |
3 |
◎ |
○ |
◎ |
アルミ以外の添加物が少ないため、素材時の耐食性が良く、良質な皮膜が得られる。 |
A1100 |
20~50 |
50 |
45~50 |
350~450 |
3 |
◎ |
○ |
◎ |
A2011 |
~20 |
― |
― |
200~300 |
2 |
× |
― |
× |
銅(Cu)5%以上含有しているため、バーンが発生する。陽極酸化処理には不適切。 |
A2014 |
20 ・30 |
30 |
30~40 |
200~300 |
3 |
△ |
◎ |
△ |
熱処理により膜厚制限ありT4※1:~40μm 、T6※2:~25μm T6以上ではバーン発生がある。素材強度は高いが添加物の影響により耐食性が著しく悪い。成膜後シミやムラになりやすい。 |
A2017 |
20 ・30 |
30 |
30~40 |
200~300 |
3 |
△ |
◎ |
○ |
A2024 |
20 ・30 |
30 |
30~40 |
300~400 |
3 |
△ |
◎ |
△ |
A5052
推奨材質 |
20~50 |
30 |
40~45 |
350~450 |
3 |
◎ |
○ |
◎ |
アルミ素材で中程度の強度、耐食性が良く、良質な皮膜が得られる。 |
A5056 |
20~50 |
30 |
45~50 |
350~450 |
1 |
◎ |
× |
△ |
アルミ色に近い発色が得られる。膜厚が厚くなるとクラックが増加する傾向がある。沸騰水や蒸気封孔により皮膜剥がれが発生する。 |
A5083 |
20~50 |
50 |
30~40 |
300~400 |
4 |
○ |
○ |
○ |
強度、耐食性が良く、溶接構造に適した材料。 |
A6061
推奨材質 |
20~50 |
50 |
35~40 |
350~450 |
4 |
◎ |
◎ |
◎ |
素材メーカー、熱処理の違いにより陽極酸化処理後、添加物の偏析による模様が出る場合がある。 |
A6063 |
20~50 |
50 |
35~40 |
350~450 |
2 |
◎ |
△ |
◎ |
押出加工に優れており、成膜後クラックは多いが良質な皮膜が得られる。 |
A7075 |
20~50 |
40 |
40~45 |
250~350 |
3 |
△ |
◎ |
△ |
超超ジュラルミンと呼ばれ、極めて強度が高くなっている。添加物の影響により著しく耐食性が悪く腐蝕が出やすい成膜後シミやムラになりやすい。 |
AC2A・B |
20~50 |
50 |
(30~40) |
200~300 |
3 |
△ |
― |
△ |
素材表面が粗く、陽極酸化処理後外観に巣が目立つ。 |
AC4A |
20~50 |
50 |
(30~40) |
200~300 |
3 |
△ |
― |
△ |
AC4C |
20~50 |
50 |
(30~40) |
200~300 |
3 |
△ |
― |
○ |
鋳物の中では表面粗さは良い。 |
AC5A |
20~50 |
― |
(30~40) |
200~300 |
4 |
△ |
― |
× |
非常に溶け易い。バーンしやすい。 |
AC7A・7B |
20~50 |
50 |
(45~50) |
200~300 |
1 |
○ |
― |
○ |
アルミ色に近い皮膜が得られる。鋳物の中では比較的良い膜ができる。 |
ADC4 |
~20 |
― |
― |
200~300 |
4 |
○ |
― |
○ |
添加物の影響で陽極酸化処理しにくい。表面に黒い付着物(シリコン)が残り色ムラが多い。 |
ADC6 |
20~50 |
50 |
― |
200~300 |
4 |
○ |
― |
○ |
ダイキャストの中では良い皮膜ができる。 |
ADC10 |
20~50 |
40 |
― |
200~300 |
4 |
△ |
― |
△ |
ADC12 |
~15 |
― |
― |
― |
3 |
× |
― |
× |
添加物の影響で陽極酸化処理しにくい。表面に黒い付着物(シリコン)が残り色ムラが多い。 |